- 「たとえ誰にも認められずとも、魔術師としての矜持だけは貫き通す」
- 俺が“学会”を追われてから、もう1年が経つ。
- 第2聖域コクマーの魔術学院にいた頃は、ひたすら魔術の研鑽に励んでいた。
- 下層の生まれだからといって卑屈になることなく、ただ純粋に魔術を極めることだけを考えていた。
- その結果、俺は学院を主席で卒業し、学会員として魔術の研究に没頭した。
- だが、それが奴らには気に入らなかったらしい。
- 俺の出自を疎み、俺の才能を妬む輩が仕組んだ陰謀により、学会を追われることになった。
- 今は独りで魔術を研究し続けている。
- 俺にとって魔術は、権威を示すための道具ではなく、世界の真理を解き明かすための術だ。
- 学会の魔術師どもは、魔術を支配の象徴として扱い、その力をひけらかすことばかりに躍起になっている。
- だが、そんな輩に関わるつもりはない。俺は俺の信じる魔術を、俺のやり方で極めていくだけだ。
- 「野外は弱肉強食。なら恨みっこなしだよな……魔物ども!」
- かつて、父は“魔物狩り”として剣を振るっていた。
- だが、俺が幼い頃に父は命を落とし、それからは修道院傘下の孤児院で育てられた。
- 孤児院での暮らしは厳しかった。
- 食事は質素で、寒い夜には身を寄せ合って眠った。
- それでも、そこには俺を育ててくれた人々がいた。
- 彼らの優しさがあったから、俺はただ生きるためだけに戦うことはなかった。
- 孤児院の子どもたちが飢えず、寒さに震えずに済むように、俺は決めたんだ。父と同じ魔物狩りになる――と。
- あれからずいぶん時間が経ち、剣を握る手にも戦場での経験が刻まれた。俺も今や中堅の魔物狩りだ。
- 依頼を受け、魔物を討ち、報酬を得る。その報酬の一部は、いつも孤児院へ送る。
- 少しでも、あの子たちが過去の俺より楽に生きられるように。
- 俺の戦いは、生きるためのものじゃない。守るためのものだ。
- 聖域都市に風が吹くたび、父の背中を思い出す。
- 俺は、あの日決めた道を、まだ歩き続けている。
- 「この聖域都市に1人くらい、あなたの味方がいてもよいでしょう?」
- 聖域都市ティファレトに探偵事務所を構えて、もう5年が経ちます。
- かつて私は、保安官を夢見て聖域保安局に入りました。
- 日々厳しい任務に追われながらも、充実した時間を過ごし、ともに戦う相棒もできました。
- しかし、ある凶悪事件の捜査中にその相棒は命を落とし、私も片目を失いました。
- それから、喪失感と責任の重さに耐えられずに保安局を去り、しばらくは空虚な日々を過ごしていました。
- それでも、街の人々は私を気遣い続けてくれました。
- 保安官を辞めても、彼らは私を仲間だと思ってくれていたのです。
- その温かさに触れたとき、もう一度彼らの力になりたいと思いました。
- 失った片目にはMa-GEARの義眼を入れ、新たな道を歩む決意を固めました。
- ――それが私が“私立探偵”になった経緯です。
- 今は探偵として事件を追うだけでなく、街の人々の頼み事にも積極的に応じています。
- 困ったことがあれば、ぜひ探偵事務所にご連絡を。
- 「聖域の果てまで届け! これがあたしの魂の叫びだ!」
- あたしはいわゆる“裕福な家庭”に生まれ育った。
- 両親は名高い魔術師で、当然のように自分もその道を歩むものだと思われていた。
- でも、魔術の理論書より、心を震わせる音楽の方がずっと魅力的だった。
- 幼い頃に初めて聴いたロックの衝撃——それが、あたしの運命を決めた。
- 「魔術師になれ」と言う親の声を振り切って、ギター1本抱えて家を飛び出した。
- それから、独学で“呪奏”を修得して街角で歌い続けた。
- 路上で演奏する日々は決して楽じゃなかった。
- でも、この音があたしの生きる証だって信じてた。
- 今じゃ、ステージの上でスポットライトを浴び、呪奏士として名を馳せている。
- だけど、歓声が響くたびに、心の奥底にくすぶる罪悪感が消えない。
- そして、誰にも頼らず、2年の下積みを経てメジャーの舞台に立った。
- 家族を捨てた後悔? それとも自由を選んだ誇り? 答えは出ない。
- でも、あたしは自分の魂に響く音を鳴らし続ける。
- 迷いも、痛みも、全部この一曲に込めて——。
- 「この道はアタイが掘り進む。ついてきな!」
- 坑道の奥深く、土の匂いと魔煌の光に包まれながら今日もツルハシを振るう。
- こんな生活、選んだわけじゃない。でも、生き抜くために選ばざるを得なかった。
- 父も母もいなくなった15歳の頃、弟妹たちは私の手を頼るしかなかった。
- ――それなら、やるしかないじゃないか。
- 荒くれ者ばかりの採掘現場で、女だからってナメられたくなかった。
- だから、力も技術も誰にも負けないように人一倍努力した。
- 気がつけば、周りはアタイを“姉御”と呼ぶようになっていた。悪くない響きだ。
- 誰かに守られる女でいる余裕なんてなかったし、そんな人生を望んだこともない。
- 今日も坑道へ向かう。家族のため、そして自分自身の誇りのために。
- アタイは聖域都市の生活を支える魔石の採掘者だ。
- 誰よりも強く、誰よりも誇り高く生きてやる。
- 「勘弁してよぉ、ウチはキミの運転手じゃないんだよ?」
- ウチは物心ついた頃から機械が好きだった。
- 父ちゃんの工房はまるで遊び場で、毎日油まみれになりながら工具を握っていた。
- 父ちゃんは名のある魔導機技師で、ウチにMa-GEARの基礎から応用まで叩き込んでくれた。
- どんな仕組みで動くのか、どうすればもっと速く、もっと滑らかになるのか、ウチの頭ん中はいつもそのことでいっぱいだった。
- そんなとき、父ちゃんが突然ポックリ逝ってしまって、ウチが工房を受け継ぐことになった。
- 悲しみに浸る間もなく、ウチは工具を握り直した。
- 父ちゃんが残した技術と想いを継いで、最高のMa-GEARを作るために走り続けた。
- 気がつけば、ティファレトの名のある魔導機技師として知られるようになっていた。
- 特にヴィークルの乗り心地とランニングコストにこだわって整備するのがウチの流儀。
- 依頼が次々舞い込むけど、ウチはどれも全力で仕上げる。
- 父ちゃんの工房の灯りは、今も絶えていない――ウチがここを守っているからね。