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『虚構侵蝕TRPG』は、テーブルトークロールプレイングゲーム(以後、TRPG)のルールブックである。
『虚構侵蝕TRPG』は、映画作品を模したフィクションが具現化し、現実を書き換えてしまう現象――“虚構侵蝕”が発生する現代世界で、プレイヤーは虚構侵蝕を認識できる“観測者”となり、世界を本来の姿に戻すべく“世界”に立ち向かうTRPGだ。
“観測者”は自らも虚構の力を利用して、大切なものが待つ現実への帰還を目指す。
その過程で、虚構と対峙した“観測者”は苦悩の沼へと引きずり込まれるかもしれない。その結果、やむを得ず虚構を受け入れることもあるかもしれない。
だが、虚構を受け入れれば、現実に虚構の爪痕を残し、”観測者”自身も虚構の残滓に蝕まれてしまう。
受け入れるのは、虚構か現実か。
その選択は、観測者であるあなたに委ねられる。
虚構侵蝕によって“現実”が塗り替えられてしまった後の世界は、一般人にとっては依然として現実の世界だが、観測者にとっては本来の“現実”とはかけ離れた世界だ。観測者の多くは、これを“虚構世界”と呼んで区別している。
VER-THは、世界最大規模のソーシャルプラットフォームである。
WEB検索・動画投稿・ライブ配信・メッセージ投稿・通信販売・掲示板といったさまざまな機能を持っている。
虚構侵蝕やそれにまつわる噂は、主にこのVER-TH内にある目立たない掲示板で囁かれている。そこには日々多種多様な書き込みが投稿されるが、慣れた者にとっては有意な情報収集の場となり得る。また、虚構世界からでも現実のVER-THにアクセスし、情報の閲覧やサービスを利用することが可能である。
観測者はVER-THで仕入れた情報を上手く利用し、虚構侵蝕に立ち向かうことになる
TRPGとは、複数の参加者による会話を主としたコミュニケーションを通じて、物語を創り共有していく遊びである。
参加者の1人はゲームマスター(以後、GM)と呼ばれるゲームの進行役を担当する。ほかの参加者はプレイヤーと呼ばれる役割を担当し、プレイヤーキャラクター(以後、PC)を操作する。
TRPGを遊ぶためには物語の筋書き――シナリオが必要だ。
「TALTO」には公式シナリオ「幻のニューヨーク」を投稿している。初めて『虚構侵蝕TRPG』を遊ぶ際は、投稿されているシナリオを用いるとよいだろう。
なお、シナリオはGM以外は読まないこと。
もし、読んだ後でこのシナリオをプレイヤーとして遊ぶことになった場合は、プレイ中にシナリオのネタバレになるような発言をしないこと。それがほかの参加者へのエチケットだ。
また、本書に書かれているシナリオについてSNS等に書き込む場合は、本書を使って遊ぶほかの人のためにも、ネタバレにならないように気をつけてほしい。
プレイヤーはシナリオに参加するために自分が担当するキャラクターを1人ずつ作成する。
これをPCと呼び、物語の主人公たちとなる。
PCの準備ができたら、いよいよシナリオをプレイすることになる。
GMは“プレイヤーを楽しませること”を心がけて、プレイヤーはGMの指示に従って、全力で楽しもう。
ロールプレイとは役割(Role)を演じる(Play)ことである。この役割はプレイヤーが作成したPCのことであり、プレイヤーはPCを「行動をさせる=演じる」ということになる。つまり、ロールプレイとは“キャラクターの役割を演じる”ことである。
作成したキャラクターにはそれぞれの能力や立場、あるいは背景といった設定があり、それらを考慮に入れて行動することによって、初めて“ロールプレイをした”ことになる。
役割という制限のもとでベストを尽くすことこそがロールプレイの妙であり、それこそがTRPGの楽しみ方だといえるだろう。
PCのロールプレイを行なっていく中で、プレイヤーがほかの参加者にPCの行動を伝える方法として、大きく分けて2種類のアプローチが考えられる。
ひとつ目は、PCの行動や仕草がどのようなものかを描写する方法だ。これは、小説で情景や状況を描写する文章や、脚本のト書き(セリフ以外の動作や行動を指示する部分)によく似ている。
ふたつ目は、セリフや身振りなどの演技で伝える方法だ。これは、即興演劇の掛け合いによく似ている。
これらのうち片方を用いてもよいし、両方を用いてもよい。そして、描写や演技を上手にできること自体は魅力的ではあるが、必ずしも上手くやる必要はない。
最も大切なのは“みんなで楽しく遊ぶ”ことなのだ。
『虚構侵蝕TRPG』は、本書を通じて参加者全員が楽しい時間を過ごすことを目的とするプレイツールである。本書に掲載しているルール、データ、シナリオなどのすべてが、そのために存在している。
そして、『虚構侵蝕TRPG』の存在意義は“本書を読むあなたがこのゲームを用いて楽しく遊ぼうと思う”ことであり、参加者全員がまた『虚構侵蝕TRPG』で遊ぼうと思い、それが繰り返されていくことにほかならない。以上を踏まえて、『虚構侵蝕TRPG』を全力で楽しんでほしい。
複数の参加者で遊ぶゲームにおいて、ゲームにのぞむ姿勢は、全員がゲームを楽しめるか否かに直結する。ゲームに対して不誠実な態度の参加者が1人でもいれば、途端に遊んでいるゲーム自体が楽しくなくなってしまうものだ。一人ひとりが本気でゲームにのぞみ、全員で楽しい時間を共有してほしい。
『虚構侵蝕TRPG』は“協力ゲーム”である。よって、すべてのプレイヤーが協力してゲーム(あるいはシナリオ独自)の勝利条件を満たすことを目指すのが、ゲームに対する基本的な姿勢となる。
プレイヤーにとっての対戦相手は、参加者の誰でもなく、シナリオに設定されたプレイヤーの勝利を阻止しようとする障害である。
注意してもらいたいのは、GMは裁定者であって、対戦相手ではないということだ。
GMはセッションを進行してプレイヤーを楽しませるホストプレイヤーだ。このことから、ゲームを遊ぶという観点から一歩離れた立場にある。
GMにはホストプレイヤーという立場でしか味わえない独自の楽しみがある。それは、“楽しませる”楽しみ、そして“創造する”楽しみだ。
遊びという観点から見れば、役割の多さに見合ってあまりあるGMならではの“楽しみ”を感じることができるだろう。
GMについて深く知りたい場合は『書籍版ルールブック』を参照してほしい。
『虚構侵蝕TRPG』は、ゲームの参加者全員が協力してひとつの物語を創り共有するゲームである。そして、その物語が生まれる過程や物語そのものを楽しむゲームでもある。
ここでは、『虚構侵蝕TRPG』を楽しむために必要な約束事について記す。
『虚構侵蝕TRPG』をプレイするとき、GMにはいくつかの権限が与えられる。
ただし、権限を行使するにあたり、GMはできるだけ正しいルールで遊ぶこと。また、誰に対しても公平なルールの運用を心がけること。
TRPGは仮想の現実世界であるといえる。本書では、その世界を再現するために必要なルールを記載しているが、それでも想定外の事態は発生するものだ。
ルールによって規定されていない状況に直面した場合やルールの適用を迷う場合に、GMはどのように裁定するかを決定する権利を持つ。また、ルールを変更したり、ルールの一部を省略したりしてもよい。
ただし、この権利を行使する際には、“状況にふさわしいか”または“公平か”をもう一度確認すること。ルールを逸脱することが可能なこの権利には、相応の責任が伴うのだ。
参加者全員が納得し、ゲームがより楽しくなるようにこの権利を行使してほしい。
GMは自らが確認していない、あるいは許可していない判定やダイスロールの結果を棄却し、やり直させることができる。
ただし、やり直しをさせること自体がプレイヤーにストレスを与えることもあるため、GMはプレイヤーの判定をできるだけ見逃さないように心がけてほしい。
GMは、ノンプレイヤーキャラクター(以後、NPC)が行なう行動の結果をダイスを振らずに自由に決定できる。
ただし、NPCにデータが設定してある場合は、なるべくダイスを振って結果を決定すること。
これは、プレイヤーに余計な不公平感を与えないようにするために必要なことである。
正しいルールで行なわれたダイスロールは、いかなる場合でも結果を巻き戻してはならない。これは、GMであっても例外ではない。
『虚構侵蝕TRPG』のキャラクターは、ダイスロールによって行動の成否や成果を決定する。
その結果が気に入らないからといって、巻き戻してなかったことにしてしまったら、途端にゲームとしての楽しみが色褪せてしまうだろう。
また、GMはNPCに対して「結果の決定」の権利を持つが、PCには行使できない。どうしてもPCの行為をダイスロールで結果を決定したくない事態が発生した場合は、ダイスロールを行なう前にGMが独自にダイスロール以外の解決方法を提示すること。
例えば、時間が限られている場合に、明らかに大勢が見えている状況において、時間の短縮のためにダイスロールを免除して結果を決定する―といったものであれば問題ないだろう。しかし、失敗したくないからダイスロールをせずに成功させたい、という自分勝手な要求であればGMは即座に却下すべきだ。
もしも、GMあるいはプレイヤーがルールの適用を間違えた場合は、速やかに訂正し、以降は正しいルールに従って処理すること。
このとき、すでに適用の終わってしまった結果については安易に時間を巻き戻さないほうがよい。
これは、巻き戻しをするとして“どこまで巻き戻すか”や“どの部分を訂正して適用するか”を公平に判断するのは難しく、それをすることに多くの時間を費やしてしまうからだ。
ここでは、本書を読み進めるにあたって必要なことや守ってもらいたいことについて解説する。
本書は4つのセクションに分けて書かれている。 なお、GMの技術やノウハウを『書籍版ルールブック』の「ゲームマスターセクション」に掲載している。
また、シナリオの書き方についての詳細な説明は『書籍版ルールブック』の「シナリオセクション」に掲載している。
このセクションには、プレイヤーが担当するPCの作成方法と、PC作成のためのデータが書かれている。
まずは、このセクションに書かれている「キャラクター作成」のルールに従ってキャラクターを作成してみてほしい。
分からない用語があった場合は、「ルール用語集」を参照すること。
なお、『書籍版ルールブック』のP64にはプレイヤーとして遊ぶ際の注意点や考え方をまとめたプレイエイドが記載されている。気になる方はぜひ購入して読んでみてほしい。
このセクションには、『虚構侵蝕TRPG』を実際に遊ぶためのルールが書かれている。
キャラクター作成が終わったらぜひ一読してもらいたい。そこに、PCに何ができるのか―そのすべてが書かれている。
このセクションには、『虚構侵蝕TRPG』の舞台となる世界についての説明が書かれている。
また、ゲームの舞台として使える都市「墨東区」について書かれている。そこに住む個性的な人々や特徴的なスポットは、『虚構侵蝕TRPG』の世界の解像度を高めてくれることだろう。
本書に登場するデータや効果においては、数値の計算を伴うものが多く存在する。
割り算などの計算の結果として端数が発生した場合、特に記述がない限り、すべて“切り上げ”で計算する。
計算式に「±」が存在する場合、効果を適用する時点で、その効果を適用するプレイヤー(あるいはGM)が「+」「-」のどちらかを選択して適用できるものとする。
「n」は整数を代入する。【身体】や「手札の枚数」など、個別に代入が指示されているものはそれに従う。
「~20」のように数字の前に「~」がついている場合、20以下の値になる可能性があることを表わす。また、「20~」のように数字の後に「~」がついている場合、20以上の値になる可能性があることを表わす。
計算式に「×」「÷」が存在する場合、「+」「-」よりも先に計算する。ただし、「+」「-」の式に()がある場合は、()内を優先して計算すること。また、計算のルールとして()を省略できる場合でも、読みやすさを重視するためにあえて()をつけている場合がある。
『虚構侵蝕TRPG』では、本文中で記号を使ってゲーム用語を表わしている。括弧内にさらに括弧が付く用語がある場合は、括弧を省略することがある。
形式 | 意味 | 例 |
---|---|---|
『 』 | 書籍名 | 『虚構侵蝕TRPG』 |
【 】 | 能力値、副能力値 | 【身体】【HP】 |
〈 〉 | 技能 | 〈運動〉〈知識〉 |
〔 〕 | 所持品 〔VER-THグラス〕 | 〔丈夫な服〕 |
《 》 | フィクションパワー | 《祓魔》《ガンフー》 |
[ ] | ルール用語 | [侵蝕度][歪み] |
「 」 | 計算式、発言、本書の項目 | 「(身体+精神)×3」「表記形式」 |
“ ” | その他の強調 | “VER-TH” |
『虚構侵蝕TRPG』をプレイするためには、GM1人と数人のプレイヤーが必要だ。
『虚構侵蝕TRPG』では、GM1人に加えて、参加プレイヤー人数として1~5人程度を推奨している。
本書または公式サイトで公開しているルールブックのことである。
ルールの参照をスムーズに行なえるように、各プレイヤーが“本書を持っている”か、“公式サイトのルールブックを閲覧できる”かのいずれかであればよい。
『虚構侵蝕TRPG』では4面体、6面体、8面体、10面体、12面体、20面体のダイスを使用する。
それぞれのダイスは2個以上使用する可能性があるため、複数個持っていると軽快にプレイができるだろう。余裕があれば多めに用意しておこう。
スマートフォンなどにダイスアプリがあれば、それで代用してもよい。オンラインセッションであれば、セッションツールのダイスボットを使用すればよい。
フィクションカードにひと組のトランプを使用する。オンラインセッションの場合は、セッションツールのトランプ機能を使用すればよい。
筆記用具はシャープペンシルなどの消しゴムで消せるものにしよう。もちろん、1人につき1セット必要だ。
アクションシーンを[陣営モード]で行なう場合、キャラクターの位置を示すために、PCの人数分と、NPCやエネミーの数だけ用意すること。
ゲームショップなどで販売している色つきのポーンでもよいし、大きすぎなければフィギュアでもよい。ただし、ダイスは判定のダイスと見分けがつかなくなる可能性があるため、コマとして使用しないこと。
セッションで使用するプレイヤー人数ぶんの「観測者シート」と、1枚の「虚構侵蝕シート」をあらかじめ印刷しておく必要がある。
シート類は公式サイトでダウンロードできる。観測者シートについては、代わりに公式サイトで提供している観測者管理シートを用いてもよい。
ゲームマスターの略。ゲームの進行役。ゲームで行なうルールの裁定、データ処理およびセッションの進行などを行なう。
GM以外のゲームを遊ぶメンバー。GMの進行に従ってゲームに参加する。
プレイヤーキャラクターの略。プレイヤーの分身となるキャラクター。プレイヤーはPCを操作することでゲームに参加し、ゲームの中の世界で行動することができる。
ノンプレイヤーキャラクターの略。シナリオに登場するPC以外のキャラクター。NPCはGMが操作する。
サイコロのこと。『虚構侵蝕TRPG』では、4・6・8・10・12・20面体のダイスを使用する。ダイスの表記は「D」、ダイスの面の数は「D」の後ろの数字、ダイスの個数は「D」の前の数字で表わす。
ダイスを振ること。『虚構侵蝕TRPG』では、ダイスを振る行為を「ダイスロール」または「ロール」と略して呼ぶ。または、単に「振る」ということもある。
ダイスロールを行なったときに出た数字。
表の項目に対して、ダイスロールで決定しても任意に選択してもよいことを表わす。ダイスロールを行なった後に改めて選択しなおしてもよい。
観測者の“現実を書き換える力”をトランプで表現したルール。“カード”と略すこともある。
一部の人間や虚構体が虚構世界で使用できる超能力。
秒単位で目まぐるしく状況が変化する緊迫した状況の中でキャラクターが行動するようなシチュエーションを処理するルール。アクションシーンでは“ラウンド進行”という特別な方法で処理を行なう。
『虚構侵蝕TRPG』の1ゲームの単位。「みんなで集まって遊ぶ」程度の意味と考えてよい。
セッションを行なうためにGMが用意した物語。遊ぶシナリオはすでに作成済みのものでも、GM自身が作成したものでもよい。
シナリオに設定されている、あるいはGMが行なうすべてのルール処理や演出。
それぞれのセッションの環境に合わせて追加できるルール。
現実世界がフィクション(映画)の世界に改変される現象のこと。
虚構侵蝕を認識できる人・モノ。プレイヤーキャラクターは全員観測者。
虚構侵蝕後の世界。
虚構侵蝕を引き起こすトリガーとなった人・物品・場所。これを破壊・変質・説得などをすることで虚構侵蝕は消滅する。
虚構侵蝕の影響により特殊な能力や特徴を持った存在。
虚構世界にしか存在しない人・モノ。
0~7段階で表わされる、虚構への理解度や距離感。観測者は1段階以上。
虚構侵蝕が“現実”を侵蝕した度合いを数値で表わしたもの。
[侵蝕度]が増加することで、虚構侵蝕が発生している地域に及ぼすさまざまな現象。
虚構侵蝕が収束して解除され、もとの現実へと戻ること。虚構侵蝕が進み過ぎると、現実に虚構の残滓を残す。
虚構侵蝕が進み過ぎた状態で虚構侵蝕が解除されると、虚構侵蝕で発生した事象の一部が残滓となって定着してしまう。
世界最大規模のソーシャルプラットフォーム。虚構世界からでもアクセス可能。
虚構世界でも現実の記憶や記録、機能を維持している物・場所。