ルールブック
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ワールドセクション:神話
虚構侵蝕が収束したあと、現実に虚構が定着して新しい現実となってしまう[虚構の残滓]。
ゲーム的には[侵蝕度]100 以上の状態で虚構が収束した場合、またはシナリオで設定されている場合に発生するものであるが、これまではその内容について詳細には触れてこなかった。
しかし、このソースブックにおいては“神話は長い歴史と広大な範囲を持つ虚構侵蝕もしくは[虚構の残滓]”だと定義していることもあり、この機会にその内容や法則などについて掘り下げて説明していく。
この章に記載されている説明や事例はすべて、汎用的な世界観で適用可能であり、本書を使用しない場合でも参加者全員の了承が取れていれば適用してよい。シナリオの都合上などで事前に了承を得るのが難しい場合でも、反対する参加者がいなければ適用して構わない。
虚構侵蝕が(期間・虚構核の状態・PCの状態などの)条件を満たせず、収束まで至らなかった場合、虚構侵蝕の定着が発生する。
これは虚構侵蝕そのもの(範囲や法則などすべて)が、新しい現実となる現象である。
この現象は規模や影響力が大きいものの、本質的には虚構の残滓と同様のものであり、法則や考え方などもそれに準ずる。ただし、長期間収束できない虚構侵蝕の全てが定着するわけではなく、虚構侵蝕として存在し続けるものもある。
[虚構の残滓]は、虚構侵蝕と同様に観測者は虚構であると認識できる。場合によっては虚構であると認識できないというのも虚構侵蝕と同様である。
虚構の残滓によって現実に定着した虚構体に関しては、完全に現実離れした見た目をしている場合などを除き、見ただけで判断することはできない。
[虚構の残滓]は、それが発生する原因となった虚構侵蝕の内容を反映する。結果的に、その虚構侵蝕の虚構核が望んだもの、もしくはその虚構侵蝕が発生する原因となった想いを反映する可能性が高い。
[虚構の残滓]の内容を設定する場合、虚構核の望みや虚構核に込められた想いを考慮して判断するとよいだろう。
虚構侵蝕同様、[虚構の残滓]にも範囲がある。
非観測者は範囲外で[虚構の残滓]を認識できない。しかし、範囲内に足を踏み入れると、[虚構の残滓]が正しい“現実”であると認識が上書きされる。
ある浜辺に“サメは空を飛ぶ”という[虚構の残滓]が発生した場合、その浜辺の外に存在する非観測者にとっては“サメは空を飛ばない”ことが現実であるし、外部からのその浜辺を観測することがあっても、サメは空を飛ばずに水中を泳いでるものとしか認識できない。ただし、その浜辺に足を踏み入れた途端“サメは空を飛ぶ”のが現実であり、その浜辺以外の地域に関しても同様に“サメは空を飛ぶ”と認識することになる。
この処理は理解に時間がかかる場合が多いため、[虚構の残滓]範囲内外の行き来は多用しない方が賢明だろう。
とはいえ、世界規模での[虚構の残滓]であれば処理はシンプルになる。例えば、本書における“神話”のように。
観測者が生まれる以前、または観測者として覚醒する以前に発生した[虚構の残滓]は、観測者であっても基本的に現実として認識することになる。よって、観測者は何百年も前に発生した[虚構の残滓]を虚構だと認識できない。
前述した[虚構の残滓]の範囲に関する認識も、非観測者と同様になる。
ただし、ストーリーが複雑になる、シナリオにおける表現の幅が狭まるといった可能性もあるため、必要であればシナリオ単位で設定を変えてしまっても構わない。
[虚構の収束]のルールにおいて、処理後の[侵蝕度]が100 以上の場合に[虚構の残滓]が発生する。
[現実乖離]の上昇など、PCに対し、ゲーム的または直接的に不利な効果がもたらされる[虚構の残滓]においては、この条件を厳守してほしい。
だが、PCにとって不利な影響がない、または不利な影響があるものの事前に同意が得られている場合に限り、上記の条件を満たさない場合でも[虚構の残滓]を発生させて構わない。
このような[虚構の残滓]の設定は、プレイ時のGMやシナリオ作者が判断して行なうこと。
通常の[虚構の残滓]は、虚構が新しい現実となって定着するものであるため、基本的にどのような手段を用いても元に戻すことはできない。
[虚構の残滓]を消滅させたければ、新しい虚構侵蝕か新しい虚構侵蝕の[虚構の残滓]で現実を上書きするしかない。どちらの手段にしろ完全に元に戻るわけではなく、“新しい現実”が上書きされるだけに過ぎない。
シナリオ単体において[虚構の残滓]を元に戻せるという設定を適用しても構わないが、安易に戻せてしまうと、緊張感やルールに対する遵守の気持ちが薄くなってしまう危険性がある。どうしても[虚構の残滓]を元に戻せると設定したい場合は、複数話にまたがるキャンペーンシナリオの最終報酬など、[虚構の残滓]を発生させなかった場合にふさわしい“対価”を用意するとよいだろう。
また、後述の事例を含む特殊な[虚構の残滓]に関しては、元来の現実を取り戻せる場合もある。
例えば、新しい現実が完全には定着しておらず、かつ元来の現実との強い[しがらみ]が残っている場合、[しがらみ]をたどっていくことで、人々の認識と接続してふたたび現実を取り戻せる可能性があるのだ。
過去に[虚構の残滓]が発生した範囲内で別の[虚構の残滓]が発生した場合、基本的には新しく発生したものが過去のものを上書きすることになるが、新しく発生した[虚構の残滓]の範囲の一部で上書きが発生せず、元々あった[虚構の残滓]が残る場合もある。
また、ふたつの[虚構の残滓]が混ざりあうこともある。過去の[虚構の残滓]は現実でもあるため、これは現実と混ざりあった[虚構の残滓]とも言える。