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まいど! 読者のみなさん。虚構タイムズVER-TH版ではすっかりお馴染み、新米記者の檜久間成水ちゃんです。
前の会社で理不尽な上司をアレしてクビになって、こっちでお世話になり始めてからそろそろ1年。
新米記者の肩書きを返上してもいい頃かな……と思ってたらK林(仮)編集長から「10年早い」と言われて落ち込んだりもしている昨今、みなさんいかがお過ごしでしょうか? アタシは元気です。
そんな近況はともかく、今年もやってきましたよ。あの特集が。そう。虚構侵蝕が頻発している(と編集長が力説している)この墨東区で最近話題の虚構侵蝕のウワサ特集!
そして今年の担当はこのアタシ! 一味違うよ!
……はいそこ。露骨にカッガリしない。分かってるってば。新米だもん。たっぷりあと10年くらいは。
でも、一味違うのは本当のマジ。信じて。トラストミー。なにせ、普通は虚構侵蝕といえば(いや、虚構侵蝕の時点で普通じゃないけどさ)“実写の作品”を元にしたものが多いのが特徴と言われてるのは、みんな知ってるよね? それがどうしたことか、アニメっぽいものが増えつつあるみたい。
やっぱりあれかしらね。クールなジャパン的な理由かしら。知らんけど。ともあれ2023年、最新の墨東区の虚構侵蝕事情、とくとごらんあれ!
最近、墨東区で実しやかに囁かれている噂がある。
実はこの日本国には“九局”と呼ばれる、内閣府直属の9つめの外局にして、公的には存在が認められていない秘密組織が存在しているという。内閣府直属とか外局って言葉だけで、なんか凄そうなのは分かる。あとでヴァスっとこうっと(※ヴァスる=VER-THで調べる)。
九局は、正体不明の性別年齢不詳の局長(連絡はいつもリモートで、局員も正体を知らない説あり)をトップに、中にはいくつか、専門分野に特化した課があるという。
その目的はざっくり言うと“この国の平和を秘密裏に護ること”みたい。そのためには、法的にダメなことも平気でやるバイオレンスな組織だとか。九局の存在と法治国家にあるまじき活動が表沙汰になると、内閣総辞職じゃ済まないともいう。てゆーか、そんな秘密組織がないと平和が維持できないって、実はこの国やばいんじゃない?
で。そんなわけだから極秘具合は徹底されてて、メディアでは報道されないし、報道しようとするともみ消されるらしいし、活動の証拠も徹底的に隠滅or偽装するって言われてる。
……でも、九局の噂を頭に入れて取材していると「これって噂の九局さんの仕業っぽいぞ」みたいな証言を聞くことはある。まぁ、証拠は掴めないんだけど。
掴んだらアタシ、もみ消されちゃうのかなぁ。
九局の課の中でもメインを張る課が、公安課と呼ばれる部門だと言われてる。ちなみに、公安警察や国家公安委員会とかとはまったく関係ない。……まぁ、秘密組織だしね。
公安課の活動は「公共の安全を脅かす、現在の日本の法律では対処できないテロや犯罪を、秘密裏かつ迅速に排除する」ことで、それを可能にする装備を与えられているという。
具体的には、まだ表向きには実用化されていない、近未来SF装備をいっぱい持っているというおはなし。
噂で聞いたことあるものを羅列すると、レーザー銃やビーム砲、サイボーグ技術に、人間の五感をネットに接続してコンピュータに入り込むフルダイブ技術、熱光学迷彩、自律AI搭載の多足歩行戦車などなど、サイバーでパンクな感じ。
公安課はそうしたオーバーテクノロジーを駆使して秘密裏に活動してて、熱光学迷彩で防犯カメラには映らないし、ネットの目撃情報は拡散される前に電脳やAIの技術で消せるし、いざとなれば目撃者を消すことも厭わないとか。怖っ。
余談だけど、秘密裏にVER-THが技術提供してるって話もあって「松田の論ちゃんならやりかねない」真実味がある。メンバーは世界中の警察や軍の精鋭や、野生のスーパーハッカーや何らかの天才をヘッドハントしてかき集めてるとか。
ときには減刑を条件に、一芸に秀でたテロリストや犯罪者を監視つきで使うみたい。彼ら犯罪者の局員は“ハウンド(猟犬)”と呼ばれ、監視役の局員“ハンドラー(猟犬使い)”とチームを組んで、犯罪者の危険度を計ることのできる超強力な銃“ディクテイター(どうやって危険度計るのかは謎)”で武装している……って、なにこの噂。設定細かいな。
こんな噂がある九局公安課には、他にも結構キナ臭い設定がいっぱいある。例えば、業務委託先に天涯孤独の美少女たちを戦闘機械に育てあげて使う組織や、天涯孤独の美少女たちをサイボーグ化&洗脳して使う組織があるとか……天涯孤独の美少女が何したっていうのよ。親でも殺された?
そうそう。構成員には忍者もいるみたい。まぁ鉄板よね。忍者テロリストを殺す忍者とかもいそう。
実はこの世界の裏側には、人間に危害を加える怨霊とか妖怪とか悪魔とか妖魔とか吸血鬼とか屍食鬼とかファンタジーなモンスターとかのバケモノが存在しているらしい。
……まぁ、ヤオモンは魑魅魍魎とか妖精の仲間だって話だし、いても驚きはしないけど。
そして古くから日本には、そんなスピリチュアルな脅威から人間を護ってきた化け物退治の専門家が存在していたらしい。
陰陽師とか密教のお坊さんとか山伏、平安時代あたりの武士。あと西洋系の祓魔師とかね。
九局退魔課は、そういう各地の退魔組織から募った精鋭を中核にした、国直轄の機密退魔組織だっていうハナシ。なんていうか、本当にマンガやアニメの設定みたいな組織。
局員のルーツがさまざまなもんだから、伝統的な魔術や呪術、怪物と契約して使役する、化物を殺せる特殊な技や武器を使うのは基本のキ。
どうも現代に入ってから化物と人間との戦いがインフレしてるみたいで、怪物の身体を利用して武器を作ったり、怪物の因子を移植したり、同化したり、食べてみちゃったりと結構なんでもあり。
うん。分かるよわかる。世界を滅ぼす力を持った最強の魔物を右手に封じて包帯巻くとかよね。知り合いにそういう中二病の観測者いるもん。ほら、メイド服着てるあいつ。
設定のインパクトで忘れがちだけど、退魔課も公安課とおなじく秘密組織ではあるんで、魔術とか結界とかいろいろ駆使して証拠隠滅するみたい。
九局には他にも課があるみたいだけど、ひとまず大きなのはこの退魔課と公安課。公安課は人間専門、退魔課は化物専門と覚えておくと分かりやすい。
あと当然、構成員には忍者もいるみたい。公安課がスパイとしての正統派忍者なら、こっちはさしずめ退魔忍ってとこね。
アタシが生まれるずっと前。浅草には国際劇場(通称、浅草国際劇場)っていう大劇場があった。
そこは昭和の頃に隆盛を誇った少女歌劇団、松竹歌劇団(通称SKD)の本拠地で、当時は宝塚歌劇団と人気を二分していたとか。でも旧国際劇場の解体後、ほどなくして松竹歌劇団は解散。輝かしい少女歌劇の伝統は消えていくかと思われた。
しかし、21世紀に入ってすぐ、奇跡がおきた! 日本に、空前の少女歌劇ブームが巻き起こったのだ!
……アタシ、当時は小さかったからよく覚えてないんだけど、あれよあれよという間に新浅草国際劇場の建設が決まって、流れるように松竹歌劇団(旧SKD)の後継の少女歌劇団、新浅草歌劇団(新SKD)まで設立されたとかで、父さん母さんにじーちゃんばーちゃん、世代じゃないはずの兄ちゃんまでテンションアゲアゲだったことはよく覚えてる。
元とは全然別の場所になっちゃったもののすごい人気で、連れてってもらった直後は、大人になったら絶対、新SKDに入団するって決意を固めたのもいい思い出です。
あれから約20年。紆余曲折ありながら、新浅草国際劇場と新浅草歌劇団はファンに愛され続けているのはみんなもご存じの通り。
……だけど、ここからが本番。この新浅草国際劇場は、虚構侵蝕関係の噂に事欠かない。
曰く、地下の広大な空間に怪人が棲んでいる。
曰く、併設された女子演劇学校の生徒たちが、秘密の地下劇場で夜な夜な決闘を繰り広げている。
曰く、時々薔薇の咲き乱れるヴェルサイユになる。
そして極めつけは、実は新SKDのメンバーは日本の平和を護る日本政府直属の秘密防衛組織で、科学と魔術を融合させたような戦闘装備を纏って戦うとかいうものだ。その活動は、九局が全面的にバックアップしているとかなんとか。……新SKDに入団する夢、半年で飽きてよかったかも。
実は「秋葉原」という地名は秋葉原駅周辺じゃなくて、ギリギリ上野地区の中にあることをご存じだろうか?(秋葉原電気街の住所は外神田。つまり神田地区)
その「秋葉原」には一軒のメイドカフェが存在する。
正確にはガンメイドカフェ。銃を持ったメイドさんがいるっていうコンセプトだけど……ほとんどメイドがいない。店内には思い思いのコスプレして、銃を持った老若男女の店員とお客がタムロする異様な空間と化している。まぁ、店名からして「AKM-47(アキバメイド47の略らしいけど、露骨に超有名な銃の名前がモチーフ)」だし、仕方ないかな。
そして、喫茶店に奇抜な格好をした老若男女という時点で、勘の良い読者は分かったかもだけど、ここ観測者のたまり場。
喫茶幻燈で観測者の知り合い(例のメイド服野郎)からもらった情報によると、武闘派観測者のコミュニティ(港湾地区の非合法組織や九局公安課、退魔課からのドロップアウト組など)で、ユルい感じの喫茶幻燈とは違って、殺伐としているらしい。
そして実はあの雑居ビル自体が丸々AKM-47の施設で、上の階は宿泊施設や道場、地下は射撃場や銃などの武器工房になってるらしい。荒事の多い虚構侵蝕では戦力になるんで、九局とも提携してるっぽい。あと、喫茶幻燈とAKM-47の両方に出入りしてる観測者も結構いるみたい。
秋葉原と神田の間にあるこの高校は「普通の学校で起こりそうな虚構侵蝕」がよく起こることで観測者の間では有名。具体的には、テロリストに占拠されたり、超常存在にしか興味のない女子生徒がいたり、戦車の部活があったりするとか。
ちなみに神田坂高校は廃校の危機で、弱小野球部やサッカー部、百人一首部やアイドル同好会、ジェットボート部などの弱小部が全国大会優勝で廃校を免れようとしてるみたい。
駿河台にある私立お茶の水学園は伝統ある名門校だ。中高大一貫校で、良家の子女が通う学校というイメージが強い。元は女子校で今は一応男女共学だけど、学内の校舎は男子部と女子部でパッキリ別れてて、実質男子校と女子校が隣りあってあるみたいな感じ。生徒同士の交流はそこそこ盛んらしい。
そして当然、この学園にも虚構侵蝕の噂がある。構内には一部の人間や観測者、虚構体しか知らない、魔法などを扱う複数のオカルト系の学校があるらしい。例を挙げるなら、イギリスにある西洋魔術の名門校の分校に、東洋魔術や呪術の専門校、祓魔師の養成校、悪魔や妖怪(虚構体)のための学校などなど、その数はどう考えてもお茶の水学園の敷地(都内の学校としては広いほう)に収まるレベルじゃない。
知り合いのメイドコスした観測者が言うには「亜空間とか特殊な結界の中に存在していて、虚構の残滓とセットで現実に定着してる」ので、敷地は大丈夫なんだそうだけど……まぁ、細かいことはいいや。今度オカルト関係で困ったら行ってみよっと。そうそう。卒業生は九局退魔課に就職することが多いみたい。
本の街神保町の一角にある可愛いお店、マジカル堂は、ファンシーな占いアイテムや手造りのお菓子、アクセサリーを売っている、「女の子の理想のお店」が形になったようなお店だ。ちなみに、店員さんはみんな小学生や中学生くらいの女の子。
お子様店員さんについては、知り合いの観測者に言わせると「普通に労働基準法違反。お前が観測者じゃないから違和感スルーしてるだけだ雑魚」とか言われる。てか言い方。もうちょっと言葉選べ。かわいいからいいじゃん。別に。
そしてこのマジカル堂も、虚構侵蝕の噂がある。
なんでも、マジカル堂で働いているあの女の子たちは全員、魔法少女や魔女っ子、魔法の国のお姫様、魔法の妖精、惑星の戦士、伝説の戦士で、そういう力を持った観測者と虚構体の拠点だって……そっかー。アタシ、そういうマジカルな何かにあてられて、あそこに出入りするお客さん枠になってるのかー。今度アタシの悩み、魔法で解決してもらおっかな。
ちなみにアタシの推しは、る~んスカイラークこと鰤籐雲雀ちゃん。
秋葉原の裏の路地を抜けた先には、知る人ぞ知る怪しい通りがある。その名もラボ通り。
その名の通り、怪しい研究所や、自称研究所、怪しい機械を開発している会社などがひしめく通りで……マッドサイエンティストに捕まって改造されたとかいう噂には事欠かない。とりま、マッドそうな白衣の男を見たら問答無用で殴り倒すくらいの覚悟が必要だ。実はただの中二病でも情けは無用。
そしてこんなに怪しいということは当然、虚構侵蝕の巣窟。現代科学を凌駕した不思議ガジェットの開発や、古代超文明の遺産の研究、ゲなんとか線とか言う謎エネルギー研究、地下のジオフロントで巨大ロボット開発など……あらゆる「怪しい科学」が揃ってるらしい。
両国国技館は相撲の聖地だ。力士が空を飛び、衝撃波を放つ強烈なあの“神事”がここで行なわれているのには、ひとつの説がある。それは、この地に眠る霊の慰霊のためだという。
そもそも両国で相撲が盛んになったのは明暦の大火の死者の慰霊が目的で、その後も関東大震災や東京大空襲で多くの人がここに葬られた。つまり相当な怨霊パワーが溜まってる。
それを晴らすために、あの“相撲”が行なわれている……と考えれば、あの過剰なダイナミックさも納得できるかも。
墨東警察署の本署は、ごく普通の警察署だ。
けど、ここに所属する警官や刑事たちは曲者揃いで知られている。例えば、所属刑事全員に地名やお酒、服や靴のニックネームがついた刑事課や、危険な刑事コンビ、抜群の推理力を持つ黒衣の変人警部補、ギャンブルに目がない下町っ子の警官(アタシ、この人よく知ってる)、鋼鉄製のヨーヨーを使う女学生刑事、メカフェチと怪力の破天荒婦警コンビ、なんで刑事になったか分からない大富豪などなど。
まぁ、うん。墨東区は安泰ね。いろんな意味で。ちなみに件の観測者曰く「虚構侵蝕の残滓があたりまえの顔して定着しまくってる、一番やばいかもしれない場所」とのこと。
この墨東区には、ヒーローがいる。比喩的な表現じゃなくて、ガチでタイツやマントを着て仮面を被った、いわゆるコスチュームヒーローというやつだ。彼らヒーローは、国家資格で自警活動を認められている存在。昔はテレビ番組で、今はVER-Tubeでも配信してて市民からも大人気。ちょっとしたアイドルだ。アタシも推しヒーローがいるけど、ベテランすぎて全盛期を過ぎたおじさんでいろいろ心配。最近大物ルーキーとコンビを組んだけど、どうなっちゃうの。おじさん。で、ざっくり言うとこの墨東ヒーロー協会はそういうヒーローを支援する組織だ。最近はヒーローの商品化に熱心で腐敗してきてるって話もあったりする。
でも、No.1ヒーロー“スーパーマイティ(サインもらった時、推しのおじさんから乗り換えちゃおうかと一瞬思ったくらいのカリスマだったっけ)”をはじめヒーローはみんながんばってる。そんな彼らが虚構の残滓とかのはず……ないよね?
みんな大好きヤオヨロズモンスター、略してヤオモン。アタシが子供の頃の相棒は、カミナリヤオモンのイネズマだった。懐かしい、アタシのイネズマ。ある日ふらっといなくなってそれっきりになっちゃったけど……元気かな。アタシのヤオモンボール、あれからずっと空。どこかで逢えたらいいな。
まぁ、そんな子供時代の感傷はともかく。この墨東ヤオモンセンターは、ヤオモンとの出会いを斡旋したり、ヤオモンボールの修理、ヤオモングッズの販売、ヤオモンアリーナを完備している総合ヤオモン施設。子供の頃入り浸ってたっけ。
例の観測者くんちゃん曰く「ヤオモンも虚構の残滓」らしいけど、ヤオモンがいない現実なんてクソだし、そこは虚構グッジョブ。
アタシの母校、私立墨東学園には困った後輩がいる。現高等部の生徒会長、桜条ジュリエンヌって子だ。彼女は観測者で、学内の観測者仲間を集めて観測者部なる部活を率いている。そしてその活動が過激。ジュリちゃんは虚構侵蝕を敵視して収束させにかかる武闘派なんで、墨東区で虚構侵蝕が起こったと知るや真っ先に介入していくムーブをかますみたい。
例の観測者曰く「話し合いで決着がつきそうな虚構を力づくでどうにかしようとする」とか。なるほど。……バーサーカー。
とはいえ観測者部(実質生徒会メンバーとカブってる)には彼女を抑えるメンバーもいるとかでうまくやってるみたい。
別名、墨東学園都市とも言われる広大なこの学園には、昔から個性的な部活が群雄割拠している。
まず筆頭が、内部で互いに鎬を削りあう、世界各地のさまざまな料理に精通した料理部。
世界最強の料理人を目指して、学園のあちこちでゲリラ的に料理バトルを繰り広げている。料理部トップの3人は鉄腕シェフの異名を取る達人で、彼らへの挑戦権を賭けて戦ったりもしてるみたい。
あと、アタシの卒業後にできたのが超次元サッカー部。試合中限定とはいえ、物理法則を無視した技(モンスターの幻影が出たり、ボールが燃えたり凍ったりする)が炸裂するのは……まぁ、相撲のこと考えれば普通の範疇かな。ちなみにうちのライバル校は浅草の雷門あたりにある学校みたい。
スポーツ関連で言うとテニス部もどうかしてる。さながら超次元テニス。なんか試合中に歌って踊ったりもするし……基本的に運動部はすごいのが多い。ボクシング部とか完全に少年バトルマンガ。
とはいえ、文化部がまともかというと全然。光画研(写真部)は昔から奇人変人の巣窟として有名。アタシが学生だった頃、ロボットの部員がいるって噂があった。他にも観測者曰く「しょっちゅう虚構侵蝕を引き起こす」映像研とかもあるらしい。そうかと思えばごく普通の軽音部もあるけど……あの娘たち、ろくに練習せんと放課後お茶ばっかしてるな。
墨東学園の学内には普通科のほかさまざまな学部が存在して、ここにしかない学部も多い。それぞれの学部は半ば独立してるので、実質学内に別の学校があるみたいな感じになっている。
代表的な学部と言えば、料理学部。料理の作り方だけでなくて、化学知識や店舗経営まで学べる。あとよそで見ないものと言えば、魔法を科学で再現した魔法科学部(最近、なぜか劣等生が無双してるらしい)や、あらゆるギャンブルを極めようと試み、ギャンブルの強さがすべての賭博学部。人間の隠れた能力を発見、開発する超能力学部。巨大ロボット工学部。この世ならざる世界のメカニズムを探る心霊工学部。なぜか美少女率がやたら高いパワードスーツ学部。なぜか美少女にしか発現しない超戦闘能力を研究して、いずれ現われるだろう彼女たちにしか倒せない敵に備える美少女バトル学部などなど……何やってんだ。うちの母校。
あ、そうそう、近々虚構侵蝕のメカニズムを研究する虚構侵蝕学部が新設されるって話もあったりする。
でもってこれらの珍妙学部、実は世界の最先端を行ってるらしい。だもんで、学園と提携した世界中の企業が、ガチの研究所を構えて、ガチで資金を注ぎ込んで技術開発をしている。
中には、学園の技術を使って悪いことを企んでいる企業もそこそこいるらしくて、シャレにならない陰謀(世界征服から宇宙崩壊まで)が未然に防がれた、みたいな話をちょいちょい聞く。例の観測者くんちゃん曰く「それ、虚構の残滓」とのこと。
両国地区と港湾地区を繋ぐ橋のたもとに一軒のオンボロ……古い道場、神下丹心流道場がある。丹心(真心)をもって敵を改心させることが目的の流派で、剣術から体術までなんでも使う。明治の頃は凄腕の剣客がいたり、戦後はボクシングジムになって、チャンピオンを育てたりしたこともあるみたい。
もっとも今は、神下さんの娘さん、さくらちゃんが切り盛りする今にも潰れそうな町道場にすぎない……んだけど、最近武術に覚えのある人達(一子相伝の武術の伝承者が数名や、パンダを連れた武術家の許嫁など)が居候するようになって大変みたい。
観測者のあんちくしょうが言うには「武術関連の虚構侵蝕が何度も起こってる」らしい。
港湾地区は全体的に治安が悪いんで、この地区にある学校もたいがいガラが悪い。そしてガラの悪さが古い。改造バイクにリーゼント、ボンタン、鉄板入りの鞄などの昭和の文化から、チーマーとかカラーギャングとかヤマンバとかの平成の遺産が今でも現役。
そして、その最高峰と目されているのがこの城東工業高校。通称「ジョートー」。不良チームの有力者が在籍していて、自由で時々憂鬱な烏たちが天上天下唯我独尊を信じてリベンジしたり、カメレオンのように狡猾に立ち回ったりしている男たちの塾だ。校内はまさに戦国時代。城東のテッペンを獲った者が墨東の学校を制すると言われてる。……馬鹿ばっか。
最近よく見かけるようになってきた人型重機、ワーカーマシン。通称ワーカー。便利な反面、暴走したり犯罪に利用されたりもあるとかで、それに対処するために港湾地区の埋立地に作られたのがこの墨車課だ。
ここにはVER-TH製の警察専用ワーカーが配備されている……まではいいんだけど、まだ歴史の浅いワーカーの実働データが取り放題ということで、特務自衛隊のワーカー(能の動きを参考にしてるとか)や、軍需産業製の廉価量産型小型ワーカー(全高4mくらいのタコみたいな頭のやつ)、今は民間企業が保有する合体変形型のスーパーロボット風ロボとかも運び込まれて、ワーカー研究も行なわれている。さしずめ巨大ロボットの見本市状態。お台場に近いこともあって、ちょっとした観光スポットになっている。
UNI-VER-TH宇宙基地は、2017年に開業したVER-TH主導の宇宙開発施設だ。今のメインはロケットの開発と打ち上げ。敷地内にはその他宇宙事業に必要な技術の研究所や工場がわんさかとあって、テーマパークみたいでテンションあがる。それらの施設は他の宇宙開発組織にも開放されてて、JAXAやNASA、他の宇宙企業も支部を設けて間借りしている。
最近は女子高生を宇宙飛行士にする計画(軽いので安く宇宙へ送れる)や、兄弟宇宙飛行士の誕生で盛り上がってる。そうかと思うと、地下に悪の侵略宇宙人の宇宙船が保管されてるとか、昔の戦艦を改造して宇宙戦艦を作ってるって噂もある。
墨東区の沖にある孤島、多戸島。古くからゴとかジラとかいう怪物が出るという伝説があるこの島に、数十年前、異界へと通じる大穴、通称“奈落”が空いた。なぜかは今も不明。
奈落は無数の異世界、異次元、並行世界、魔界、天界、地獄や天国などに繋がっていて、“やり方(異界ごとにさまざま)”を知っていれば望んだ異界へと“降りる”ことができる。虚構侵蝕の影響で新しい異界へ行けるようになるって話も聞く。
危険な異界で冒険や宝探しをする職業(儲かるみたい)もあって、世界各地から腕に覚えのある猛者が集まっている。
……そしてもちろん、こっちから“降りる”だけじゃなくて、あっちから“登って”も来る。その結果、多戸島には人間と共存可能な異界の住人たち(ファンタジーなのとか、天使や悪魔、隣接世界から来た異世界人などなど)が住み着き、いつしか“奈落島”と呼ばれるようになった。島はそうした異界の住人や生き物(家畜とかペットとか)であふれかえっていて、奈落を中心にちょっとした都市が形成されている。
そうそう。異界の住人は基本、特別な許可がない限り島の外には出られない。とはいうものの、抜け道はいろいろあるみたいで……陸側の港湾地区では、どう考えても不法入国(?)してる異界の住人をよく見かける。場末の呑み屋とか、某有名SF映画に出てくるエイリアンだらけのバーみたいになっている。
でも時々、シャレにならない住人(神とか魔王とか人喰いの化物、怪獣、地球侵略を企む何か、謎の霧など)が不法入国して騒ぎになるみたい。
また、島には九局の支部をはじめ、関わりの深い異界の住人の暴走に対処する専門の組織(宇宙人なら黒服のアレ、悪魔なら祓魔師、ゴーストならバスターズ)がいくつもあって、異界の住人の協力も得つつ、島の秩序の維持に務めている。